- 2026.02.11
- 院長コラム
抜かない矯正 院長のこだわり
中学2年生の頃、私は上の4番目の歯(小臼歯)を抜きました。
当時は「そういうものだ」と受け止めていましたが、大人になってからふと鏡を見るたび、あるいは噛み合わせや口元の印象について考えるたびに、「本当に抜く必要があったのだろうか」「別の選択肢はなかったのだろうか」という思いが、静かに残り続けました。
その小さな後悔が、いまの私の診療の原点のひとつになっています。
歯科医師として歩み始めた私は、大阪大学歯学部第二口腔外科で顎関節症や顎骨骨髄炎の治療と研究に携わり、りんくう総合医療センターでは外来・病棟で多くの症例を担当しました。そこで痛感したのは、歯や顎は単独で存在しているのではなく、関節・筋肉・骨格、そして日々の生活習慣の上に成り立つ“全体のバランス”だということです。
「噛む」ことが崩れると、人生の質そのものが変わる。だからこそ、治療は“削る・抜く”という選択を急ぐほど単純ではない——そう強く思うようになりました。
その後、京都たけざわ歯科で副院長として矯正治療と咬合治療に深く取り組む中で、私の中にひとつの確信が育っていきます。
抜歯を前提にしないことは、理想論ではなく、診断を深め、選択肢を増やすことで現実になるということです。もちろん、抜歯が最善となるケースもあります。けれど、抜歯は“戻れない決断”でもあります。だからこそ私は、自分自身の経験も踏まえ、結論を急がず、できるだけ歯を残す可能性を最後まで探る姿勢を大切にしてきました。
2006年、心斎橋にライフ歯科・矯正歯科を開院してからも、その考えは変わりません。
当院では、歯並びだけでなく、顎の位置、噛み合わせ、口元のバランス、舌や頬の筋肉の癖、(小児の場合は)成長発育まで含めて丁寧に見立てます。装置や治療計画を工夫し、まずは**「抜かないで成立する道」を真剣に検討する**。そのうえで、必要な場合にだけ抜歯という選択肢を提示する。
それが、私が考える“患者さんに誠実な矯正治療”です。
また、大学病院時代の仲間とともにClub GPを立ち上げ、学びを継続し、講演・執筆・翻訳にも取り組んできました。臨床で得た実感を学術的に検証し、また臨床へ戻す。その往復が、治療の質を磨き続ける原動力です。現在は日本歯科審美学会認定医として、見た目の美しさだけでなく、機能と調和した「自然な審美」を大切にしています。
矯正治療は、歯を動かす治療であると同時に、その人の表情や自信、これからの人生に関わる治療です。
私自身の「あの時、できれば抜きたくなかった」という思いがあるからこそ、私は今日も、安易に抜歯へ進まず、歯を残す可能性を丁寧に積み上げる矯正治療にこだわり続けています。





